アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

ポトフ 美食家と料理人 (The Taste of Things)@ The Little Theater

監督:トラン・アン・ユン

ブノワ・マジメル

ジュリエット・ビノシュ

 

ブノワ・マジメルというと、クロード・シャブロルの晩年の作品によく出てきて、すげぇ胡散臭いけど憎めない奴をやらせたらピカイチだなという印象を持っていた。しかしあまり見かけないうちに、ずいぶんふっくらとされて、だいぶ年取ったなぁと思った。

一方のジュリエット・ビノシュは、この10年ぐらいまったく年をとっていないのではないかと思ってしまうほど、ほとんど印象が変わらない。相変わらず素敵だが、善良さが出過ぎているのではないかだろうか。

映画であるが、すっげぇつまらなかった。口数の少ない、善良な人たちの呑気な言動を延々と見せられて、出来の悪い日本のドラマみたいな間の悪さである。時に美しいショットはあるが(明け方から朝への光の変化、ジュリエット・ビノシュの裸身、マジメルが風呂で料理の香りに惹きつけられるショット)、カメラの動きは場当たり的でフィロソフィーがない(冒頭の料理のシーンは見事な捌き方である。この調子で行ってくれれば。。)
そして使用人のヴィオレットの扱いはあまりに不憫だ(ジュリエット・ビノシュがマジメルの料理を一人食べているシーンで、一度だけヴィオレットのバストショットがインサートされるが、このショットはなかなか良い)。
冒頭の料理シーンが結構良いなと思ったのは、料理を一つの共同作業として描いているからだ。皿が人から人へと渡され、その間を人が通り、という動きをかなりうまく描いている。しかしそれ以降は、ブノワ・マジメルのよくわからない熱意というかこだわりというか、そういう個人的な資質がただあられもなく提示されるだけで、多面的な意味空間が創出されない。
さっきから言い訳がましく書いているように、良いシーンも結構あるのはあるのだが、何というかあのオッサン4人衆の食事会が始まったあたりから根本的な興味を失ってしまったというのが正直なところ。

それにしても、カンヌでグランプリ、批評家大絶賛...

(『パスト・ライブス』でも思ったが、単に間が悪いだけの「余白」とか「沈黙」に寛大過ぎないか。)

上映前、アリーチェ・ロルヴァルケルの新作の予告が流れた。待ち遠しい。

 

★★★☆☆☆☆☆☆☆