アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

不良少女モニカ Summer with Monika @ Dryden Theater

監督:イングマール・ベルイマン

ハリエット・アンデルセン

言わずと知れたベルイマン初期の傑作。約10年前、大学を卒業した春にベルイマン映画をDVDでひたすら見ていたので、そのとき以来の鑑賞。

ところで今回はちょっと不思議なことが起きた。Dryden Theaterは、ジョージ・イーストマン博物館が運営しているので、アメリカでも有数のフィルム所蔵数を誇っている。本作もフィルム上映だったのだが、これがアメリカで当時公開されたフィルムで、すごい肝心なところがオリジナルと違っていた。というのも、この映画が超有名な理由は2つで、一つは船の上で寝そべるハリエット・アンデルセンの官能的なショット、そしてもう一つがハリエット・アンデルセンがタバコを吸いながら突然カメラ目線になるショットだ。なんと今回のフィルムでは、このカメラ目線ショットが、いきなりオープニングに挿入されて、彼女のカメラ目線とともにタイトルが入るのだ。終映後に解説員の人が「これはひどい、、、」と言っていたが、本当にひどい(笑) 曰く、この映画はアメリカでは、いわゆるエクスプロイテーション映画的な位置付けで公開され、上映時間も60分ぐらいに切り詰められたそうだ。しかもスウェーデン映画というのはエロいことで有名だったらしく、奇才ベルイマンというよりは、スウェーデンのエロ映画として公開されたらしい。このアメリカ上映バージョン(といっても尺はもとの96分だった)では、タイトルが『Summer with Monika  A story of a bad girl』となっており、放題の『不良少女』はここからきていたのか、と納得。

 

ということで、一番大事なシーンの感動がお預けになってしまったものの、しかしやっぱりこの映画は面白い。内地→島→内地、という構成になっていて、島はかなり明るい、束の間の天国という感じで撮られていたように記憶していたが、いやいや結構島のシーンも暗く、緊張感がある。撮影自体は、内地でのシーンがかなり計算されたシークエンスショットが中心で、これも面白いが、やっぱり島でのロケーション撮影の奔放さがこの時代ならではだと思う。アントニオーニの『情事』もそうだが、海の近くで男女がはしゃいでいれば、それだけで映画になっちゃうのだ。

モニカが肉を奪って逃げるシーンが素晴らしい。この草むらを猛ダッシュで駆ける場面は、黒澤より迫力がある。