アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

Love Lies Bleeding @ The Little Theater

監督:ローズ・グラス

クリスティン・スチュアート、ケイティ・オブライエン、エド・ハリス

A24製作ということで不安の方が大きかったのだが、これは面白い。ローズ・グラス、なかなか面白い人が出てきた。アメリカの郊外を舞台に、クリスティン・スチュアート演じるジムのスタッフと、ベガスのボディ・ビルダーのコンテストに出ようとするケイティ・オブライエンのクィアで逸脱した恋愛関係を軸にしつつ、露悪的なバイオレンスストーリーにだんだん推移していく。当初うっすらあった倫理が中盤以降気持ちよく放棄され、ひたすら暴走するオブライエンと、後始末をさせられるスチュアートの対比が笑える。『チタン』の前半に近い雰囲気があるかもしれないが、リアクションにまわるスチュアートがさすがのパフォーマンスだと言って良い。

撮影もなかなか快調で、ニューメキシコの夜空は文句なしに美しいし、スチュアートが勤務するジムの荒廃した雰囲気も抜群だ。また、何度かある俯瞰ショットで闇夜を走行する車を捉えたショットも良い。うるさいだけのカット割りや、奇をてらったようなアングルショットもなく、切り返しも冴えていて、例えばオブライエンが頭突きをかましてくる(わけのわからない)場面を、真正面の切り返しで撮っている。最後の最後に完全にアホに振り切るのが受け入れられるのも、こうした基本的なショット構成がしっかりしているからだろう。ゲロ、血飛沫、猫、などの小ネタの扱いも視覚的に面白い。

ただ、なぜか104分という時間が妙に長いというか、少し疲れる。おそらくはカンフル剤中毒の描写が少々過剰な点に起因するか。

 

★★★★★★★☆☆☆