アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

テルマ&ルイーズ @ Dryden Theater

監督:リドリー・スコット

ジーナ・デイヴィススーザン・サランドン

製作年: 1991年

本日は、国際女性デー(International Women's Day)ということで、大学内でも色々メーリスがまわっていたのだが、Dryden Theaterでもそれにちなんだ映画を上映するという企画。

上映前にキュレーターから前情報についての話によれば、脚本を書いたCallie Khouriは80年代にLAのMTV業界に入ったものの、業界の女性の扱い、ステレオタイプに心底失望しており(sexual harrasmentという言葉もあまり広まっていなかったとのこと)、なんとかしたいと考えていた。そんな矢先、この映画の元となった事件を知ったKhouriは、これをもとに脚本を書くことを決意する。完成した脚本が知人の計らいでリドリー・スコットの手にわたり、これを気に入ったスコット監督がプロデュースに名乗り出て、監督まで引き受けたということのようだ。フェミニズムの流れとしては、この映画の公開直後にアニタヒルによる、クラレンス・トーマス判事からセクハラを受けたという告発があったりと色々進展があった時代らしい。
(あまり体系だった歴史認識を持っていないのだが)確かに90年代前半というのは、女性映画の傑作が誕生した時代で、『羊たちの沈黙』はもちろんのこと、『ブルー・スチール』や『告発の行方』も思い出される。また、91年に開始したイギリスのドラマシリーズ『プライム・サスペクト』もフェミニズム的精神に溢れた骨太なクライム・ドラマに仕上がっている。

 

ということで、いつになく来場者が多く、上記のキュレーションにより全体的にかなり盛り上がった雰囲気のなか上映が始まり、上映中も主演二人がクズ男を懲らしめるたびに拍手喝采であった。ジャック・ランシエールなどの著作にあるように、芸術が観客に行動(変容)を促すべきなのか、そうではなく認識をズラすべきなのかという構図で考えると、今日は完全に前者の雰囲気であったとだけ言っておこう。

 

さて、何を隠そう、実は初見であり、一応見ておかなきゃという義務感にかられて足を運んだ次第なのだが、うむ、これは確かに立派な名作だ。荒野を車が走ってれば映画になる、という感慨がある。終盤は『パーフェクトワールド』みたいだ。そしてこのラストは胸を打つ。