今回は配信で見たやつだが、面白かったので記録。
ニュージャーマンシネマといえばヴェンダース、ファスビンダー、ヘルツォークしか知らないというレベルの人間なので、フォン・トロッタ監督など存在も知らなかった。ハンナ・アーレントを撮った人なのか。
過激左翼の姉と、穏健左翼で雑誌編集や街頭で中絶の権利を訴えるなどの活動をする妹を主役に据えたドラマ。爆弾テロ容疑で捕まった姉との接見シーンが作品の中盤で何度も反復され、その一つひとつが大変充実している。接見室とか、取り調べ室とか、狭い空間での緊張感ある対峙を描いた映画は良い(ミレールの『検察官』とかブガイスキ『尋問』とか)。面白いのが、幼少時代の回想では妹の方が反抗的で行動的なのが、現代のパートでは姉の方が過激なのだ。
この映画のスマートさは、大きな出来事(テロ、逮捕、死、、)が起きているにも関わらず、それらの直接的な描写を周到に避け、時間の感覚を大いに揺さぶりながら、地味な描写を積み重ねていく点だろう。自宅で人形の首吊りを再現しているシーンの不気味なこと!(しかもこの一連のシークエンスはその後物語上は何の意味も持たない。)
『夜と霧』を引用し、ナチズムと戦後ドイツに断絶を認めぬ姿勢が現れている。
ベルイマンがお気に入りに上げていたというが、それも確かにわかる気がする。
★★★★★★★★★☆