お目が高いって言われたい!〜アメリカ在住MD PhDの映画日記〜

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

ドライブアウェイ・ドールズ @ The Little Theater

監督:イーサン・コーエン

脚本:イーサン・コーエン/ トリシア・クーク

出演:マーガレット・クオーリー、ジェラルディン・ヴィスワナサン

 

ジョエルとイーサンのコーエン兄弟は、これまでずっと共同で映画を撮ってきたが、最近別々に活動するようになったらしい。ジョエルの方は『マクベス』をデンゼル・ワシントン主演で最近撮ったが、本作はイーサンの方が監督。共同脚本のトリシア・クークという人は、兄弟の作品で編集を長年務めていた人で、この二人はいま夫婦なのだが、トリシア・クークはレズビアンを公言していて、お互いに別々のパートナーがいるらしい。

というのを、本作を見終わってから軽く調べて初めて知ったのだが、というのもコーエン兄弟の作品はここのところ全然追えてなく、最後に見たのが『トゥルー・グリット』である。。なぜ見なくなったのか自分でもよくわからないのだが、何となく興味がなくなっていったという気がする。しかし『ファーゴ』や『ノーカントリー』は好きだし、『トゥルー・グリット』も良いシーンがいっぱいあり、何よりエンディングで流れたLeaning on the everlasting armsの美しさが忘れ難い。にもかかわらず、本当に久しぶりの鑑賞になってしまった(ファーゴのドラマ版にも関わっているのか)。

で、本作は若きレズビアンの二人(カップルではない!学生でもない!)がレンタカーでフロリダに向かうのだが、レンタルした車にやばいものが入っていて、、、という超ありがちなB級ロードムービーである。二人を追う組織の男二人組が非常にドジで、『ファーゴ』のストーメア、ブシェミのコンビを彷彿とさせるのだが、全体的に『ファーゴ』を思いっっきりバカに振り切った作品という感じである。そしてなかなか面白いじゃないか!

まずもって、同じレズビアンでも、奔放な方とおとなしい方という対照的な役柄を演じた主演二人の活躍が良い。特にマーガレット・クオーリーの、鼻にかかったような声でマシンガントークを繰り広げる様は、キャサリン・ヘップバーンを思わせる(と言ったら言い過ぎか)。

そして、やっぱりコーエン。ちゃんと一つ一つのシーンに気の利いた演出がある。時にその演出がこれ見よがしで鼻白むということも過去作品にはあったが、本作は全体的に軽いトーンであり、要所要所に視覚的な工夫が用意されていて、正しく”アメリカ映画”だと思った。

具体的に言えば、懐中電灯の見せ方、ビル・キャンプが投げる書類がそのまま落ちるのを撮ったショット、宙に放られて地面に落ちたケースから◯◯がコロコロ転がってそれを犬が追いかけるというオチなど、物と人の相互作用によって画面を活性化するという基本中の基本をちゃんとやってくれている。

たった80分。これも素晴らしい。

★★★★★★★★☆☆