アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

Menu Plaisir les Troisgros @The Little Theater

監督:フレデリック・ワイズマン

 

4時間のドキュメンタリーで、具材の下拵え、牧場やワイン園、チーズ園のパート、料理のパート、それから客とシェフの対話が、ある程度の偏り(たとえばシェフと客の対話は終盤に集中している)をもたせつつ、しかし完全には構造化されないかたちで並べられている。

牛の鳴き声や卓球に興じる音など、オフの音声を多用することで、見えている以上の空間の広がりを生んでいるのが良いし、個性的な客やスノビッシュな客を捉えるカメラには遊び心があった。また、冒頭近くの、シェフと息子2人がメニューを練っている場面のショットが極めて美しい。後半ではシェフが味見をして批評する場面があって、このシーンがとても面白く、このシーンを境に、終盤はシェフがかなりクローズアップされる。それまでは見守り役っぽかったのが、自分でもフライパンを握って厨房に活気を与えるのだ。いろんな時間帯のフッテージを交錯させて使っているに違いないのだが、映画の前半と後半で厨房の雰囲気がかなり違って見えるのが面白い。このあたりは構成と編集が大いに効果を発揮しているだろう。