アメリカ在住MD PhDの映画日記

映画を見る合間に膠原病の研究をしています

チャレンジャーズ Challengers @ The Little Theater

監督:ルカ・グァダニーノ

ゼンデイヤ、ジョシュ・オコナー、マイク・フェイスト

 

前半はなかなかのアホ映画だ。ダブルスで学生チャンプとなった二人が、同世代のゼンデイヤに見惚れ、パーティで何とか頑張って知り合って、ホテルでいちゃいちゃしようとするが、その日は3人でキスして終わり(ここもアホらしい)。その後ゼンデイヤの電話番号をかけて決勝を戦い、めでたくジョシュ・オコナーが勝利し、そこから交際するようになる。大学に入ったあとも関係は続き、マイク・フェイストはヤキモチを焼きつつ、彼女が気になってしゃあない。で、とある試合でゼンデイヤの負傷をきっかけに関係が変わり、、という超絶ステレオタイプ青春スポーツ映画になっている。いま書いたあらすじは単線的に直したもので、実際の映画ではクライマックスの対決を起点に幾度となく過去のシーンに戻って、色々とエピソードを挟んでいき、いかにして13年間が経過したか、あるいは13年経ってもいかに成長がないかを描いていく構成になっている。まぁテニスってなかなか映画として盛り上がらないから、こういう構成にするしかないというのはあるだろう。そもそもグァダニーノの主眼は、テニスというスポーツではなく、アスリート同士のホモソーシャルな愛憎を面白おかしく提示することにあるように見える。ゼンデイヤをめぐって争う二人がなかなか良いキャスティングで、特にジョシュ・オコナーは先日見たロルヴァルケル『La Chimera』に続き、人格者とは言い難いながらチャーミングな笑顔で見るものを武装解除するような魅力がある。演出の力点も、イケメンながらワイルドさに欠けるマイケル・フェイストよりは、オコナーとゼンデイヤのエピソードの方が気合いが入っているように思う。特に、オコナーがゼンデイヤにコーチを依頼する場面は、壁際の仰角ショットを使った中々良い演出になっていて、この壁際のやりとりは『君の名前で僕を呼んで』でもやっていたから、グァダニーノとしても好きな手法なのだろう。だが、続いて暴風のなか密会する場面ではライティングがまったく雑で、全然盛り上がらない。全体的におちゃらけた映画で楽しめるのだが、こういう大事なところでもっと頑張らないと締まらないというものだ。

ちなみにお話としては、『突然炎のごとく』に近い三角関係なわけだが、ゼンデイヤのキャラクターに、何をしでかすかわからないという怖さは全くなく、お話を転がす存在にはなり得ていないように思われた(その分男二人のホモソ・コメディにするのが狙いなのかもしれないが)。

 

★★★★★★☆☆☆☆