35mmフィルム
製作年1933年
監督:シドニー・フランクリン
出演:ジョン・バリモア、ダイアナ・ウィンヤード
撮影:ジョージ・フォルシー
どこにも配信もされておらず、アメリカでさえ80年代にテレビで放映されたっきりのレア映画らしい。シドニー・フランクリンって誰やねん、という感じではあるが、youtubeにいくつかサイレント時代の監督作がアップされている。Dryde Theaterとしては、撮影のジョージ・フォルシーの特集の一環らしいが、これまたマイナーな。。
ハプスブルグ家のルドルフ太公が、革命によりオーストリアを追い出されてから10年後、密かにウィーンに戻ってきてかつての恋人で、今は著名な精神科医(明らかにフロイトがモデル)の妻であるエレーナに会いに来るという話。もともとは舞台作品を映画に翻案したものだということで、どのぐらい忠実なのかは不明だが、オープニングはオーストリア皇帝の元屋敷で観光客のツアーが催されている。その観光客に紛れてエレーナがいて、彼女のバストショットからそのままハプスブルグ王朝時代の時代に移行する。そうやってしばらく回想が続くのかと思いきや、エレーナがルドルフの小突き合いのようなやり取り(ルドルフがしゃがんで礼をするエレーナのスカートをわざと踏んで立ちあがれなくすると、お返しとばかりにエレーナがルドルフの手に口付けすると見せかけて噛み付く)と二人のダンスのシーンを描く程度で、再び現代のパートに戻ってくる。その後は回想に戻ることはない。むしろ、ルドルフがやってきたホテルにおいて、最終的に来場していた客も含めて、まるで10年前を思い出すようなどんちゃん騒ぎが巻き起こるというようなかたちで、「失われた過去」の再現とその挫折が展開される。
それにしてもなんと現代的で知的な仕立て。精神科医の妻として、決してルドルフの誘惑に屈さぬエレーナの確固たる人間像もさることながら、思わずうなってしまったのが、上述したホテルのシーンでの一幕だ。ルドルフがあの手この手を使ってエレーナをその気にさせようとするのだが、王朝に仕えていた演奏家(バイオリンとアコーディオン奏者)を呼び出して演奏させる。ムーディな音楽で、うっとりした表情を見せるエレーナに覆い被さるルドルフ、二人の様子を嬉々として見ながら演奏家達はますます誇らしげに間近で演奏を続けるのだ。挙げ句の果てにルドルフが、「そんな無理やり刺激しようとしなくてええわ!」と突っ込む始末。ここでも、「過去の再現」という不可能な試みが極めて喜劇的な調子で展開されているのだ。
演出の上では、最初からドアの隙間からの窃視をはじめとしたドアの開閉、そして役者達の立ったり座ったりのアクションと動線の展開(このあたりは舞台映画ならではという感じもするが)が見られる。二人が再会するシーンは物語の上でも大切であるが、鏡のフレームに収まった二人を撮ったショットから、二人が同じ方向を向いたクローズアップをつないでおり、非常に印象的だった。ということで、この時代にはごろごろいた才能かもしれぬが、確かな演出力が発揮された快作と言って良い。