監督:ニコラス・レイ
撮影:ジョージ・E・ディスカント
音楽:バーナード・ハーマン
上映時間:81分
オールタイムベストと聞かれれば、『孤独な場所で』をあげるのだが、これもそれに匹敵する出来栄え。タイトル開け、ベッドに置かれた銃を手に取るアップショットで始まるところがいかにもレイだが、街でのシーンでは結局銃は一度も発射されない。映画はロバート・ライアンを含めた警察官の夜廻りを前半に描き、暴力の過ぎるライアンが田舎町に飛ばされて少女強姦事件を解決するのが後半。前半は夜の都市が舞台で、ネオンライト、それを反射する水溜り、路地裏のコントラストの強い撮影が主体だ。さきほど触れたタイトル開けのシーンは、夜シフトの警官たちが、クラクションの合図で次々家を出て出勤する一連のシーンの一つだ。警察官を一人一人、このように群像劇的に描くというところに意表をつく「新しさ」を感じる。報われない夜の汚れ仕事で精神的疲労を描きつつ、後半で田舎町の寒空の下の惨劇を描く警官ドラマというのは当時どれぐらいあったのだろうか。(私の浅い映画史の知識では)ちょっと思いつかないが、後年のあらゆるクライム・サスペンスものに通底しているモチーフであることは間違いない。
演出の細部も光っている。路地裏で暴漢者をとっ捕まえてタコ殴りにしようとするライアンを、相棒の刑事が諌める場面では、シャッターに寄りかかるライアンのクローズアップにおいて、後ろのシャッターの溝をツーッと雨水が流れる。こういうのが良い!また、終盤の崖の追走劇では、犯人が転落したあと、時間差で雪の塊が落ちる様が独立したショットとして捉えられる。こんなのも明らかに別々に撮っているわけで、こうした細部の豊かさには惚れ惚れする(最初、犯人らしき人間が木からジャンプして逃げていく場面でも、衝撃で揺れる枝がメインに撮られている)。
加えて、手持ちカメラと思われるショットにも意表をつかれた。強盗事件の犯人の特徴に合致する人間を見つけて、車で男を追いかける場面で、車の窓越しのショットが手持ちカメラっぽい。二つ目が、上述した路地裏の暴漢者の場面で、ロバート・ライアンが殴られた女のもとに駆けつけたあと、パッと後ろを振り返って犯人を追っていく瞬間に手持ちのブレブレのショットになるのだ。50年代の映画でこんなショットあるのか!と驚いた。